キッチンとココロの拡張カウンター

記事:安藤建築設計室 安藤かおり

散乱するカウンターは
自分の心の乱れの指針だ。
散らかりだすと、このカウンターごとどこかに仕舞えないかと思う。
そういう思いから生まれた、カウンターの下にさっと仕舞えるもう一つの盆の仕様。

散らかったときの一時避難に使うこともあれば、お茶準備などセットしておいて、そのまま準備できる「呈茶コーナー」になることもある。
引き出しのように「仕舞い切らない」ことがポイントである。不便な高さにしない限り、ワンアクションで出し入れ可能な、利用頻度の高い便利なカウンターとなる。

こちらは、熱いままのフライパンや、濡れた木製の器やや竹製のざる、水切りなどの一時避難に徹底したパターンである。引き出しのかたちだけど、一次避難と言う点でここでいうカウンター用途に近い。
水や熱に困らないよう、底の代わりに、市販のステンレスパイプを利用している。機能的な素材でつくられた「昔からある道具」は湿気に弱いものが多い。こういう場所があれば、メンテナンスに躊躇せずに揃えられるようになる。

木製にこだわらなければ、引き出しごと金物にするいう手もある。(写真はHäfeleのワイヤーシェルフ,・キッチンキャビネット用、先ほどHPを見たら取り付けの仕様がより簡易に変わっていた)この金物は、簡単に皿ごと取り外せるのでこまめなお掃除がしやすい。
ただ既製品だから幅が60㎝か90㎝に限られてしまうので、設計時に配慮が必要になる。金物自体が結構お高いということにも気を付けたい。
正面から道具の様子が見えるので、見せたい人にはグッドだけど、気になる人は木製で製作した方が融通はききやすいかもしれない。


仕事から帰って、慌てて晩御飯をつくる。片付けながら調理したいけどできないときもある。
むしろ作っただけほめてほしい、と懇願する疲れ切っている日々。
カウンターに出しっぱなしのものを片付けられれば、脳に伝達する情報量 を減らすことができる。
スペースの余裕は、心の余裕。家族にも優しくなれるような気がする。


written by 安藤かおり 
(一級建築士事務所 安藤建築設計室)
名古屋出身。一級建築士。今は山陰にて夫婦で建築設計事務所を運営しながら、環境デザインと薪ストーブについて研究中。
設計と研究と育児に追われる日々を過ごしています。

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