おかわりカウンター

「お母さん〜牛乳」

母さんは牛乳ではなく

「お〜いおかわり」

おかわりでもない。

ましてやお〜いでもない。

毎日台所に忙しく立っている身としては、おかわりくらい自分でやってほしいと思うことがある。建築の仕事でキッチンプランニングをする際に、私が何かと「おかわりカウンター」の必要性について説くのは、常日頃から家族へのそんな願望があるからだ。

ギラギラと暑い夏の日、母が不在でもカウンターの上に保冷の麦茶とグラスを用意しておけば、小学校から帰ってきた、喉をカラカラにした真っ赤な顔の子ども達が、競い合って麦茶をグラスに注ぐ。夕飯時にはカレー鍋とご飯を入れたお櫃をでんと置いておく。疲れ切ったお母さんは一旦座ったらもう立ちたくないから、2杯目以降のおかわりは自由にやってもらう。私のおかわりカウンターの使い勝手はそんなイメージだ。

写真の奥谷の木家はコンパクトな都市型住宅で、キッチンは建物ごと設計した。対面側のキッチンはシンクと作業台のステンレスカウンターが主な構成で、手元は隠れるように壁を立ち上げている。そのステンレスカウンター横の、ダイニングとキッチンの間に、「おかわりカウンター」として位置づけた場所がある。

ただの作業台としてステンレスのままカウンターを伸ばすことも考えたけれど、桜の無垢板一枚分だけ段差を付けて、お盆がちょこんと乗っているような雰囲気をイメージした設計に。コンパクトな家だから、空間的な隔たりが出にくいよう、立ち上がりは無くしダイニングと対面。提供しやすく受け取りやすい形にした。

私がお邪魔すると、おしゃべりしながらお茶を入れてくれる。たったW450㎜のスペースだけど、とびきり活躍するおもてなしの場所でもある。その時間もまた楽しい。

その他の「#キッチンとカウンター」