私にとってキッチンは、料理をつくるだけの場所ではない。
何かを刻んだり煮込んだりしていると
思考がまとまっていく気がするし、
自分の好きな道具に囲まれていると
「基地」のような安心感がある。
誰が言ったか「良いキッチンはコックピット」というのは納得で
必要なものにすぐ手が届き、動線に無駄がない。
例えば、心身ともに中だるみの水曜日さえも
パイロットである私を気持ちよく働かせてくれる。
棚の高さがどうとか、この鍋はここに置きたいとか
「ちょっとしたこと」が積み重なっていい家は育つ。
建築士という仕事の中では
建物の中の時間まで図面に描くことはできないけれど、
図面の先にある暮らしにいつも想いを馳せている。
主婦目線でわかる問題点と
建築士、本屋、職人…いろいろな目線からの解決策。
キッチンを舞台に綴る、家事という名の実験の日々が
少しでも誰かの暮らしのヒントになりますように。