水を切る道具
記事:安藤かおり
食器洗いは面倒だけど「洗う」こと自体は実は嫌いなわけではない。汚れた食器の待機場所がないとか、乾かす場所がないとか、要はスペース問題が実は大きい。食洗機は最近ではデフォルトで標準装備だけど、手洗いしたい木や漆や金属で出来た大事な器って、暮らしていくうちに徐々に増えていく。そのためには、乾かす場所が別に必要になってくるのだ。
スペース上の問題も重々承知の上だけど、道具こだわるというのもひとつの解だと思っている。洗いあがったときにお気に入りの籠に収まっていれば、気持ちも上がる。使いやすいふきんがあるのも然り。

シンクの内側に納めるタイプのステンレスの洗い籠は、シンクメーカーのラインナップを見ると主流になりつつあると思う。でも、わたし個人としては、シンクと籠底との距離が近いと、シンクの水が跳ね返ってきそうなところがなんとも心もとない。できれば、洗った食器は水場から高さのある場所に置きたい。シンク上やカウンター上に並べるパターンもあるが、平たく並べるには限りがあるので一度に乾かせる量が少ない。
そこで、シンク上の食器棚や、キッチンの引き出しにちょっとした仕掛けを施すこともある。食器棚の一番下段や、引き出しの底を抜いてしまって、水切台にしてしまうのだ。

シンクはシゲル工業・水栓はグローエミンタ・タイルは名古屋モザイクのひだS
扉が閉まっていれば、ほら、見えない。キッチンの引き出しの場合は、湿気が気になるので、軽く拭いてからしか入れないのが難点。でも、ちょっとくらい熱いフライパンも置いたってステンレスだからかまわない。

冬限定の荒技だが、ストーブの熱気で、こんな風にざっくりと熱で干してしまうこともある。

ものの15分でカラカラに乾くけど、竹ザルには熱がよくなさそう…。 わたし的分析によると、水を切ることと仕舞い方の導線は関係している。導線が短ければ籠は小さく、長ければ大きくなる、気がしている。

written by 安藤かおり
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(一級建築士事務所 安藤建築設計室)
名古屋出身。一級建築士。今は山陰にて夫婦で建築設計事務所を運営しながら、環境デザインと薪ストーブについて研究中。
設計と研究と育児に追われる日々を過ごしています。