かゆいところに手が届く「つまさきスイッチ」

記事:安藤建築設計室 安藤かおり

「おすすめのキッチン水栓はありますか?」と、あるソーシャルサービスの編集さんから質問され、先日ぐだぐだと答えさせていただいた。今日はは忘備録かわりにそれを書きます。
具体的に、グローエのミンタとか、SANEIのSUTTOとか、人気のあるものはInstagramをたたけば沢山知れると思います。今回のメインは、文末のかゆいところに手が届くスイッチのお話です。

基本的にキッチン水栓で求められることは、
大きいところからこんな感じで条件を絞り込んでいくことが出来ます。
1混合水栓(水と湯が出るということ)
2シングルレバー
3浄水器の有無
4シャワーホースの有無
5センサーの有無

グローエミンタのグースネックパターン、すっとした根元が人気。米子東町の改修

12の条件はそこまで難しくないけど、3「浄水器が必要」ということになると、選べる品数は一気に絞り込まれます。浄水カートリッジ入り水栓はとかくボディが大きくなりがちです。デザイン的に良いもの…言われると、かなり限られるというか、ほぼこれしかないというか。それが嫌な場合は、W水栓、という手もあります。

SUTTOはよくテレビドラマのセットとかでも見かけます。お値段も手頃。赤江の家

4「シャワーホース」が伸びるということは、割と一般的な機能ですが、引き出せるということは、常にどこかに仕舞われているわけです。水気のついたホースが、キッチンキャビネットの中に納まるのですから、それだけ想像するとあまり気持ちのいいものではないような気がします。「水受け」と言われるバケツのような部品がオプションでついてきます。私は、これで水が溜まった様子は一度も見たことはないのでそこまでご心配に及ぶことではないのですが、メーカーさんは心配に心配を重ねて準備されています。グローエのK7や三栄SUTTOは、あえてホースを出してしまおう、という機能性と形のデザイン性から結構人気があります。

そして、5「センサーの有無」。これが大きな選択の分かれ道です。ハンドルに触れることなく、センサーで水が出せれば、キッチンでは手が汚れることもあり大変便利ですし、つい掃除をさぼりがちなハンドルの根元がとっても汚れにくくなります。しかしながら、センサー部品がある分、3の浄水器のようにボディが大きくなりがちです。さらに、わざわざこんな個性的な形にするんだろう、と思うこともしばしば…。その点、TOTOさんの水ほうき水栓は、デビュー自体はかなり前であるのに、タッチの基部も小さくて、デザイン的にも機能的にも理に適っているグッドデザインに思います。但し、そこはTOTOのシステムキッチンでしか使えないというなかなかの企業戦略です。

とっても見えにくくて恐縮ですが、シンク下にフットスイッチあり。水栓はグローエミンタのショートパターン

どんな好みのキッチン水栓でも、センサー有無については攻略する方法が、水栓と関係ない部分で補完できます。それは、「フットスイッチ」という、水栓の開閉をアシストするものです。キッチンのシンク下、キャビネットのもっと下の巾木の部分に取り付けます。常に水栓のハンドルレバーを「開状態」にしておいて、足で「閉」じておきます。そうすると、水栓をつまさきでコントロールすることが可能です。デザイン的にはもう絶対これなんだけど、本当はセンサーがいいのに!って時に、重宝しています。実は自宅もそれを使っていますが、不都合があるとしたら「家人以外、水の出し方がわからない」ことと「電気配線工事が必要」であることです。

水栓は、他にも私が個人的に気にしている部分として
・泡沫蛇口・吐水距離
があるのですが、これは何気にシンクの深さやシンクの裏の仕様と連動します。これは使う人の年齢や、暮らし方も関わることもあり、長くなりそうですので、またの機会にさせていただきたいと思います。

written by 安藤かおり 
(一級建築士事務所 安藤建築設計室)
名古屋出身。一級建築士。今は山陰にて夫婦で建築設計事務所を運営しながら、環境デザインと薪ストーブについて研究中。
設計と研究と育児に追われる日々を過ごしています。

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