ダイニングの相棒「キッチンワゴン」


記事:半場唯建築アトリエ 半場唯

小さな家で生活していると、ちょっとダイニングで書類整理や宿題を、なんてことは頻発する。一旦片付けないと食事ができないね。なんてことになると、机の上を元通りに片付けようなどと言っている暇もなく、お腹減ったよと騒ぐ子供達を横目に、とりあえずものを移動させる日々。
食事の後も同じ話で、いつでも家族の中心にあるダイニングは片付けておかないと、捗るものも捗らない。

そんな食卓の問題を解決できないかと頭を悩ませていたのと時を同じくして、友人のキッチンを考える機会が舞い込んだ。どのようなキッチンを作ろうかと話している中で、丁度ダイニングが片付かないのよね…という共通の悩みが話題となった。同じ悩みにすっかり話が盛り上がり、私の方から一時的に片付けることができるキッチンワゴンなんていいのでは?とかねてから胸に秘めていた思いを伝えると喜んでくれた。

末永く使用できて簡素な形態のものであり、経年変化の感じることができる無垢材で制作したいと思い、材料には無垢の木を選んだ。
制作は家具をよくお願いしている家具職人にお願いした。
図面を描いて、材料を選定。打ち合わせを重ね、ようやく第一号が完成した。
真ん中の段は盆となっていて、食事の際に必要なもの(友人はご飯のお供をのせるとのこと)をサッと出し入れできるように、取り外しができる形とした。

カトラリーやティッシュペーパーなど、食卓にあると助かるものをここに集めておくと、出して入れるという動作だけで机が片付いて便利なのではないだろうか。
一番上の段は、片付けの際、一時的に食器を置けたら助かるなあという友人の鶴の一声で、食器を載せて移動しても落下することの無いよう、少し深さのある盆の形とし、食器たちの一時避難場所の役割を担ってもらうことにした。

ダイニングの片付けに必須である布巾の居場所も友人の要望である。この度は真鍮の直径8㎜のパイプを利用した。
当初、この部分は移動の際の手掛けにと思い木製で考えていたのだが、ここに布巾をかけたら更に便利!という、これまた友人の一声で、選んでいた樹種と色味の相性が良く、濡れたものに強い金属無垢の真鍮に変更した

驚いたことは、友人が無作為に布巾をかけた途端に働く車へと変貌し、益々私自身のワゴンへの愛情が増してしまったことである。(娘を嫁に出す気持ちとはこのことで…)
家族の一員となり、更に馴染んでいくことだろう。
まったくもって、主婦の機転の利いた思い付きには脱帽である。


そんなたくさんの希望を凝縮した、主婦の欲望にまみれたワゴンとなった第一号。
更に樹種を検討して、形を簡素にしても良いかなと職人と話しながら、第二号への研究に勤しむのである。。。

ワゴン制作協力:Bench Work Tatenui

written by 半場唯 
(半場唯建築アトリエ)
島根県益田市出身
2019- 半場唯建築アトリエ 設立
結婚を機に宍道湖の近くで暮らすようになり、宍道を拠点に設計事務所をしています。

https://www.facebook.com/HYUI.ARCHI.ATELIER/

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